2006年01月22日

ダイエットのうそホント!?〜消費エネルギーを増大させることの意義〜

4145331b.jpgこれまでの考察や推論を通じて、ダイエットのための運動の目的は、その運動によって体脂肪を減少させることではなく、骨格筋の脂質酸化能力を向上させることであり、そのためにはサーキットトレーニングが最適である可能性が高いという結論に至った。

もちろん、サーキットトレーニングが骨格筋の脂質酸化能力の向上に及ぼす影響については明らかにされていない部分もあるかと思われるが、トレーニングに対する身体の適応から考えればその可能性は否定できないといえよう。

ただ、ここで強調しておきたい点は、運動そのものによる消費エネルギーの増大が全く体脂肪の減少に影響しないということではないという点である。有酸素運動等によって消費エネルギーを増大させることは余剰エネルギーの減少をもたらし、場合によっては、そのことが体脂肪減少に及ぼす影響が高いことも予想される。
そして、長時間にわたる有酸素運動は、その運動中における脂質に対するエネルギー依存度を高め、その運動の体脂肪減少効果を産み出すことになる。

これまでの先行研究の結果がそれを証明していることは疑いようのない事実である。

しかしながら、運動指導の現場で感じることは、定期的にウォーキング等の有酸素運動を行なっていても体脂肪率が高い傾向にある人や、なかなか運動の効果がみられない人が多いということである。

古くから、ダイエットの基本は「消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスをとることである。」そして「そのためには、消費エネルギーを増大させるための運動を行なう必要性がある。」といわれ、これまでに私を含めて多くの運動指導者がそのような指導をしてきた。

確かに運動することで余剰エネルギーの減少が引き起こされれば、体脂肪の蓄積を防ぐことができる。

そして、エネルギー源の不足が生じれば、より多くの体脂肪が脂肪組織から分解されることになり、体脂肪が分解され放出された脂肪酸がエネルギー源として利用されれば体脂肪が減少することになる訳だが、これまでに何度もお伝えした通り、我々人間のエネルギー源として作用している物質は脂質だけではない。
(ただし、前述の通り長時間にわたる有酸素運動時におけるエネルギー源の不足は、その運動中における脂質に対するエネルギー依存度を高めるが・・・)

脂肪酸と共に我々の主要なエネルギー源の一つである血糖は唯一、脳のエネルギー源であり、我々の身体は脳の機能を維持するために、すなわち、生命を維持するために血糖値をある一定のレベルに維持しようとする機能を持っている。

従って、エネルギー源が不足した状態に陥った際には、血糖値レベルを維持しようとする機能も働き、必ずしも、脂肪酸だけにエネルギー源を依存する訳ではないと考えることが出来るのである。

つまり、消費エネルギーと摂取エネルギーの差にマイナスを生じさせても必ずしも体脂肪が減少する訳ではないと考えられるのである。

では、一体なぜ、運動を行なうことによる消費エネルギーの増大が、体脂肪の減少、すなわち、ダイエットに有効であると考えられているのだろうか?

今回は、それを考察、推論してみたいと思う。

ダイエットのための運動としては、古くから低強度の有酸素運動が提唱され、数ある有酸素運動の中でもウォーキングが推奨されてきた。

しかしながら、ウォーキングが直接的に体脂肪減少に及ぼす影響は意外にも少ないといえるのである。もちろん、それはウォーキングに限ったことではないのだが・・・

ある物体が移動した際に産まれるエネルギーという側面だけ考えれば、ウォーキングによって消費されるエネルギーは、単純に「体重×移動距離」で表すことが出来る。

この数式によって得られた値は、必ずしも正確にその運動(ウォーキング)の消費エネルギーを表している訳ではないが、体重50kgの人が5km歩いた時に消費されるエネルギーは50×5=250kclとなり、そのエネルギーを消費するために必要とされるエネルギー源の糖質と脂質の比率が1:1だと仮定した場合、このウォーキングによって体脂肪がエネルギー源として利用されたのは125kcl分になると計算できる。

そして、体脂肪1gがエネルギー源として利用される際には7.7kcalのエネルギーが産生されるといわれていることから考えると、このウォーキングによってエネルギー源として利用された体脂肪量は僅か20gにも満たないのである。

5kmウォーキングするのに必要とされる時間は、ウォーキングスピードに依存し個人差があるだろうが、時速5kmのスピードでウォーキングしたとしてもおよそ1時間を要するのである。

つまり、1時間ウォーキングを行なっても20gしか体脂肪が減少しないことになるのである。

この推論はいささか乱暴な部分もあるが、それ程大袈裟な話ではないといえ、いずれにしても、体脂肪を減少させることにおいて如何にウォーキングが非効率な運動であるか理解して頂けるのではないだろうか。

もちろん、これ以上(1時間以上)ウォーキングを続ければ、脂質に対するエネルギー依存度が高まり、体脂肪の減少がみられることになる訳だが、それは多くの人にとって現実的ではなく、また、現在推奨されているダイエットのためのウォーキング方法とは異なるものになるだろう。

しかしながら、ダイエットを行なう上でウォーキングは何の意義も持たないという訳ではない。

既に何度もお伝えしている通り、ウォーキングを行なうことによって消費エネルギーを増大させることは余剰エネルギーの減少に結びつき、少なくとも現在の身体の状態を維持することは可能となる。

そして、ウォーキングを長期継続することによって、骨格筋の脂質酸化能力も高まり、長期的にみれば体脂肪の減少がみられる可能性は高いのである。

が、そこには個人差も生じ、長期継続しなければ体脂肪の減少がみられないとのことから、挫折をしてしまうことも多いのである。

いい換えれば、ウォーキングによって体脂肪の減少がみられた人は、既に何度もお伝えしている通り、遺伝的に脂質酸化能力が高かった人、あるいは、ライフスタイル的、性格的にウォーキングを長期継続することが可能であった人であると考えられるのである。

このような側面がありながらも、ウォーキングがダイエットに有効であるとされていたのは、いわゆる「肥満治療」という医療的な領域においてその効果が立証されてきたからではないかと考える。

近年、これまでの先行研究の結果を踏まえて、「健康のための身体活動(activity for health)」と「体力を向上させるための運動(exercise for physical fitness)」は異なるものであるという見解が認知されつつある。

これまでは、健康を維持するためには行動体力の向上を促す“運動(exercise)”を行なうことが重要であるとされてきた。

しかしながら最近では、健康を維持するためには行動体力の向上を促す程の運動を行なわなくても、“日常生活における身体活動量(activity)”を増やすことで充分な効果が得られることが明らかにされているのである。

健康を維持する能力、疾患を予防する能力あるいは疾患に対する抵抗力、回復力は防衛体力と定義されるが、本来「体力」という概念は運動機能に基づいていることから、これまで防衛体力を論ずる場合にも行動体力の物差しを用いることが多かった。

従って、これまで行動体力を向上させること(physical fitness)が健康の維持には有効であるとされてきたのである。

しかしながら、身体的不活動を起因とする疾病である生活習慣病の多くは、代謝機能の改善を図ること(metabolic fitness)が重要であり、代謝機能の改善を図るためには行動体力の向上を目的とした「運動」ではなく日常生活における身体活動量を増やすだけでも充分であり、日常生活における身体活動量の増加によってもたらされるインスリン作用の改善は、高血圧、動脈硬化症などにも有効であるとされている。

ただ、ここでいう代謝機能の改善とは、これまでに述べてきているような代謝機能(脂質酸化能力)の改善、向上というレベルではない。

いい換えれば、それ程までに現代人の代謝機能は低下しているということである。

ウォーキングは日常生活における身体活動量を増やすレベルの「活動」であり、そのような点を踏まえて考えれば、ウォーキングを行なうことによって生活習慣病のリスクとなる代謝機能を改善することは可能であるが、体脂肪をより効果的、効率的にエネルギー源として利用できるレベルにまで代謝機能を向上させるためには、行動体力を向上させるための「運動」が必要であるといえるのである。

身体的不活動を起因とする肥満は生活習慣病を引き起こすことから、医療の現場では、生活習慣病の治療のため、予防のための肥満改善方法としてウォーキングを推奨してきたことが推察される。

そして、過度な肥満を引き起こしている人に対して、行動体力を向上させるような運動は、その運動強度が高すぎ心臓や血管に対するストレスや、自らの体重が足首や膝、腰といった各関節にストレスをかける可能性が高いことから、強度の低い身体活動であるウォーキングが推奨されていたことが推察されるのである。

これらのことから、運動による消費エネルギーの増大がダイエットに有効であることが定説になったのではないかと考えられる訳だが、これまでにもお伝えしている通り、運動によって消費できるエネルギーが意外にも少ないことは周知の通り。

従って、医療としての肥満治療が必要な場合はさておき、ダイエットにおける運動は、消費エネルギーの増大による余剰エネルギーの減少に重きをおくよりも骨格筋の機能を向上させることに重点をおくべきであるといえるのではないかと考えるのである。
posted by NOGU at 12:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ダイエット情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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