2006年01月30日

レプチンとは・・・

2180b575.jpg私たちの身体は、肥満に関わる遺伝子(ob遺伝子)を7番目の染色体に持っている。

脂肪細胞組織に中性脂肪が蓄積してくると、脂肪細胞組織はこの遺伝子を用いて「レプチン」というタンパク質を産生し分泌するのだが、このレプチンは脳の視床下部に作用し、食欲を減退させエネルギー摂取を抑制すると共に身体の活動を高めエネルギー消費を促すことが明らかにされており、これらのことから、ob遺伝子、ならびにレプチンは、食欲と体重調節(体脂肪量調節)に関与すると考えられている。

動物を用いた研究においては、このob遺伝子に異常(変異)があると、極度の肥満を引き起こすことが報告されているが、ヒトにおいても肥満家系に属する子供達のob遺伝子には同じ変異が認められたことが報告されており、これらのことからob遺伝子が「太りやすい体質」を決定している要因であることが示唆されている。従って、ob遺伝子の変異によってレプチンの分泌量が低下している人、あるいはそのレプチンに異常が生じている人が太りやすいということになる訳だが、レプチンが作用する脳の視床下部におけるレプチンに対する感受性が低いと、正常にレプチンが分泌されていても肥満を引き起こすことになる。

これらのことから、肥満体質を決定するのは視床下部におけるレプチン感受性の低下によるものであることも示唆されているが、「どのようなメカニズムでレプチン感受性が決まるのか」あるいは、「レプチン感受性を高める方法があるのか」などについては不明であり、レプチン、およびレプチン感受性について更なる研究が行なわれている。

このようにレプチンは肥満に関連するタンパク質であることから注目を浴びていたのだが、近年では生殖、代謝、骨の形成などの重要な機能を制御することも明らかにされ、これらについて多くの研究が行なわれている。

女性においては、月経不順による骨粗しょう症や骨粗しょう症に伴う骨折などが問題視されているが、最近の研究では、骨粗鬆症、骨折、不妊を生じやすい視床下部性無月経の若年女性に低用量のレプチン投与が効果的であることが示唆されたのである。

この研究では、エストロゲンおよび成長ホルモン濃度が低く、甲状腺レベルに異常がみられる視床下部性無月経の女性スポーツ選手6人を低用量のレプチン投与で3カ月間治療する(治療群)一方で、別の6人には同様の治療をせず(未治療群)、およそ9カ月間にわたり観察を行なった。

その結果、治療群では全員のホルモン濃度が正常に回復し、平均5.5カ月間なかったとされる月経が再開、骨密度が改善したが、未治療群に変化はみられず、病態の原因がレプチンの喪失であることが明らかにされた。

女性における月経不順や無月経の原因の一つとして過度な体脂肪の減少が挙げられているが、この研究結果から、過度な体脂肪の減少によってレプチン分泌量が低下し、それが原因となり月経不順やその他の症状を引き起こす可能性があることが示唆されたことになる。

ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのヒト栄養研究責任者兼ハーバード大学医学部准教授のChristos Mantzoros博士は、「レプチンが関与する病態には神経性食欲不振、視床下部性無月経、エネルギー欠乏症の3種類がある。」と述べ、「今回の研究結果から、エネルギー欠乏症の不妊女性に対して体外受精を行なう代わりに低用量のレプチンを投与するなどといった新しい治療法選択への道が開けた」と述べた。

そして、「今後は、視床下部性無月経女性におけるレプチン投与が骨粗鬆症の予防、およびホルモン濃度の正常化に安全かつ有効であるか否か、長期的なレプチン投与が心臓、肝臓、腎臓、脳といった他の器官機能に及ぼす影響について、更なる検討が必要である。」ことを示唆している。

ところが一方で、東京医科歯科大学の野田政樹教授らと米ベイラー医科大学との共同チームは、レプチンに骨の破壊を促進する働きがあることを報告している。

この骨の破壊を促進するメカニズムと、上述した研究におけるレプチンの作用機構は別のものであるされるが、レプチンの作用については未だ不明な部分も多いといえよう。

いずれにしてもレプチンについては、今後も更なる研究が必要であるといえる。
posted by NOGU at 12:26| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ医・科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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